それゆえに、遠近法の導入がもう一つの客観的研究の産物である解剖学と結びつき、ルネッサンスの絵画の支えとなったのは当然のことであった。 絵画空間の哲学47
絵画から文学を見ると、近代文学を特徴づける主観性や自己表現という考えが、世界が「固定的な視点をもつ一人の人間」によって見られたものであるという事態に対応していることがわかる。幾何学的遠近法は、客観のみならず主観をも作り出す装置なのである。(『日本近代文学の起源』風景の発見)
遠近法に従う絵画で探求された事とは、空間と視覚とを客観化すること、すなわち閉ざされた経験や習慣に従うのではなく、また実感された視覚に従うのですらなく、無限についての新たな把握を含む数学的な手続きと実験的手続きをもって、外界の客観的な像の再現を図るものに他ならなかったのである。47